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024:2006年度 第4回 2006年9月2日開催

学校の枠を超えた交流学習
伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち

  • デジタル読解力を育てる情報教育

0. 趣旨説明

インターネットが学校で活用されるようになった1995年頃から、交流学習には大きな注目と期待が寄せられ、実践研究が進められてきました。
交流学習には、教育内容としても教育方法としても、大きな可能性と実績があります。しかし、教師にとっては、クラスの子どもたち以外の「他者」が存在することを前提に授業を設計し、運用することは、容易なことではありません。学習効果があるとわかっていても、実施が難しいのです。 そこで今回は、国内外の交流学習を成功させている方々をお招きし、ベスト・プラクティスから以下の諸点を学びたいと考えています。

  • 交流学習の教育効果はどのようなものか、何に効くのか
  • 交流学習の成功の秘訣は何か
  • 交流学習の「よさ」を引き出すために、今後、テクノロジーに期待されることは何か

1. 基調講演:「日英交流学習サイト"Japan-UK Live!"」
ハイディ・ポッター(ジャパン21・エグゼクティブディレクター)
http://www.japanuklive.org.uk/

1.1. 学校のカリキュラムにおける異文化交流

ハイディ・ポッター 「ジャパン21」はイギリスのNPOである。イギリス国内の教育や、イギリス国内での日本に関する教育を行っている。国際交流はその一環である。「ジャパン21」の話に入る前に、学校のカリキュラムにおける異文化理解についてお話しする。
イギリスでは、英国教育技能省(日本の文部科学省に当たる)の政策で、学校には外国との交流を行う義務を課している。一般的に、各教科の中で海外の事例を積極的に取り入れている。小学校ではトピック型が中心で、例えば社会科では、1学期間日本など特定の国のことだけを学習することができる。イギリスでは日本のように決まった教科書がないので、イギリスの先生は授業を行う上で自由度が高く、先生の工夫によって授業形態が変わってくる。例えば、社会科で特定の国を取り上げながら他の教科と結びつけて、技術、リテラシー、算数など全てを巻き込んで学習を構築できる。
中学校では小学校よりも時間がとりにくくなるが、同様に社会科、特に地理の時間に国際交流が行われる。また、クラブ活動や優秀な学生に向けた授業でも国際交流が行われている。
日本の状況を考えると、小学校では総合的な学習の時間で国際交流が一番盛んに行われている。交流活動の他に、環境や福祉に関する教育も行われている。中学校では、選択国語、社会、英語、クラブ活動で国際交流を目指している学校がある。

1.2. 異文化を学ぶことの重要性

ハイディ・ポッター 異文化を学ぶことによって、子供たちの視点が広がっていく。国際交流をすることによって、相手の国の文化に接することで、相手の国の日常習慣などに気づく他に、相手を通して自分の国の日常習慣に気づくことができる。
本やインターネットなどで調べれば簡単に色々な情報が手に入る。また経験者に尋ねても色々なことを知ることができる。調べることも重要であるが、ある程度誰にでもできる。それを伝えることがさらに重要である。相手に自分の文化に興味を持ってもらおうとすることは、自分の評価にもつながり、また自分の文化を伝えたいという気持ちの向上と表現能力の育成になる。

1.3.「Japan UK Live」(http://www.japanuklive.org.uk/

「Japan UK Live」は国際交流のための一つの入り口である。我々は日英交流に16年ほど携わっており、インターネットでの交流においても日英交流の様々な課題が同じように繰り返されていることに気づいた。そこで、交流学習における問題点を解決するために、この「Japan UK Live」を始めた。

1.3.1.「Japan UK Live」の特徴

「Japan UK Live」の最大の特徴は完全にバイリンガルであるという点である。英語のページと日本語のページにはまったく差がないように翻訳される。子供たちは母国語で思う存分伝えたいことを伝えることができる。
国際交流の日程を組むことは、先生たちにとって大変負担になるが、「Japan UK Live」では、設定されたテーマを元に、交流をすることができる。こちらでテーマを設定することによって使いやすくしている。また、掲示板では写真を用いながら議論をすることができる。小学校4年生から中学生が主に利用している。

1.3.2.「いっしょにホームページ」

「いっしょにホームページ」では、日本とイギリスの特定の学校同士がペアを組んでホームページを作る。掲示板形式のサイトで2つの学校の交流が始まる。たとえば、互いの教室の写真をアップして比較・考察したり、環境問題といったテーマを設定してディスカッションを行う。ネット上に収まる必要はなく、ビデオ制作なども行っている。

1.3.3. 先生のサポート

先生用に各種の専用のワークシートが用意されている。低学年用と高学年用があって、ここに書き込むと、サイト上の「みんなのひろば」に公開される。また、交流相手を探すためのサポートがある。また今までの交流の題材やケーススタディを閲覧することができる。先生たちのためのメーリングリストが各種あり、自由に参加することができる。投稿されたメールは日本語と英語に相互翻訳される。

1.4. 交流学習に参加する生徒のメリット

    学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち
  • 相手に伝えるための表現の工夫をすることによる、表現力の向上
  • PCの操作をするため、画像の処理や掲示板の貼り付け方などのリテラシーの向上
  • 自分の文化を紹介することによって、自分の文化への理解をさらに深めることができる

生徒から非常に好評だったのは、日本の学校が自分の学校を紹介する冊子を、イギリスの学校に送ったことである。

2. チュートリアル:「学校間交流学習の現状と課題」
稲垣 忠(東北学院大学教養学部・助教授)

2.1. 学校間交流学習とは?

定義:

離れた学校と学校をインターネットで結び、子どもたちが掲示板やテレビ会議で交流しながら学ぶこと。

ポイント:

  • 生活地域に根ざす
    習慣などには一般的なものと、地域特有のものがあるが、地域特有のものに焦点を当てる。
  • メディアの活用
    情報教育から発展した経緯から。
  • 人間関係を組み替える
    人間関係の枠組みをどう打ち破っていくか。
  • 共同による学びのデザイン
    楽しい授業を演出する教師の役割。

2.2. どんな学びが起きるのか?

稲垣 忠 宮城と宮崎の小学校同士が、ブログで朝顔の観察日記をつけあった例を紹介する。地域により朝顔の成長の速度が異なる。それに気づいた小学生同士が原因の考察をしたり、それを記述した結果を先生がまとめてブログにアップを行った。
次に、宮城と熊本の小学校のテレビ会議の例を紹介する。海外とのテレビ会議はつながった喜びに対することが大きいが、国内になるとシビアになる。質問されるとすぐに答えなくてはならない、知識を持っていなくてはならないなど、突っ込み合いが可能になる。また、大人同士だと気を遣い合ったりするが、子ども同士だとそういったことがあまりない。このケースではホームページ作成のテレビ会議を行った。写真の質や文字の読みやすさについてコメントを交わした。
海外のシリアと日本の小学校の交流では、日本の生徒たちは、シリアは情勢的に不安定な地域であるが、実は犯罪率が低かったり、きれいな家に住んでいると言うことがわかった。

2.3. 学校間交流学習を取り巻く状況

交流学習の状況は様々であるが、1台のインターネットにつながるPCがあればそれで可能である。歴史的に一番古い交流学習は1920年代、フランスで始まったフレネ教育である。当時学校に広まったガリ版印刷機を用いて、印刷したものを他の学校に伝えるという形で行われた。
交流学習に似ているものとして、「遠隔学習・遠隔授業」がある。また似て非なるものとして「交流教育」があり、これは健常者と障害者や、離島などと本当の交流をするものです。
交流学習が実施されるのは、総合的な学習の時間が一番多く、続いて選択科目、最近では社会科や国語の教科書の発展学習でも推奨されている。
交流学習に関する研究については、論文の数は2003年にピークを迎えたが、その後減っている。これは、交流学習が一般化してきたためと考えられる。
交流学習で用いられるメディアは、インターネットの他に、携帯電話やFAX、宅配便や対面交流など、使えるものは何でも使うといった状況である。

2.4. 学校間交流学習のタイプ

    学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち
  • 交流体験
    お互いを知り、仲良くなることが目的
  • 実践報告
    お互いの学習を深めるために比較・討論
  • 共通活動
    調査、栽培など同じ活動をして比較
  • 協働制作
    1つのモノ・企画等をいっしょにつくり上げる

2.5. 交流学習はどこが企画するのか?

  • 遠隔独立型 2校〜数校 地理的に離れている
    たまたま知り合いの先生が行うなど
  • 地域共同型 2校〜数校 地理的に近い学校との交流
    地域の教育委員会などが企画する、地域に限定されたプロジェクト
  • プロジェクト型 10校以上
    運営ホストになる学校・団体がある

2.6. 現在進行中の交流学習のプロジェクト・地域の取り組み

  • 国際
    • iearn
    • アートマイル
    • Japan UK Live
    • 対話プロジェクト
    • World Youth Meeting
  • 全国
    • NICER Co-lab
    • D-project ユネスコ世界寺子屋リーフレット
    • ヴァーチャル雪まつり
    • 子ども知恵図鑑
  • 地域
    • 宮城県みやぎみんな友達プロジェクト
    • つくば市Linuxを利用した共同学習
    • 愛知県愛知エースネット

2.7. 交際交流の課題

    学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち
  • 相手探し支援
    • 全国規模のプロジェクトは減少傾向。誰が運営するか?
    • ネット上のマッチングは成立するか?
  • 授業デザイン支援
    • 教科→短時間で出来る交流モデルプラン
    • 総合→年間計画に安心して交流を組み込むには?
    • 共通→交流の流れと授業の流れ、指導するポイント
  • 学習評価の問題
    • コストパフォーマンス→交流の手間に見合う成果はあるか?
    • 交流の成果?交流→普段の授業の変化?
    文化間学習ネットワークICLN(三宅なほみら,1984〜)

2.8. 交流学習の授業設計(元ネタはどこだ?)

  • 実践をたどると?
    • 100校プロジェクト(94年)、こねっとプラン(96年〜)
    • NHKの番組を使った交流(95年〜)
  • 方法をたどると?
    • ジグソー学習、バズ学習などの協同学習法
    • フレネ教育、生活綴り方など作文→交流
    • へき地の交流教育
  • 理論をたどると?
    • 社会的構成主義の学習論
    • CSCL/CSCW研究の蓄積
    • 異文化接触・異文化適応の研究

2.9. 交流学習をつくる3つのポイント

  • コミュニケーション
    どのようなツールで交流するか?
  • コミュニティ
    相手をどう意識させるか? 仲間意識をどう育てるか?
  • コラボレーション
    どんなテーマで交流するか? いっしょにできる活動は?

2.10. 交流学習における学びのリアリティ

  • コミュニケーション
    「メディアを通して遠くの人とお話しできる」手ごたえ
  • コミュニティ
    「いっしょに勉強する仲間がいるんだ!」という確信
  • コラボレーション
    「地域によって違うことや同じことがある」実感

2.11. 交流学習の学習効果

  • コミュニケーション
    コミュニケーション力,情報活用能力
  • コミュニティ
    学習を追求する意欲,人とかかわる力
  • コラボレーション
    異文化・自地域の理解,共同作業をするスキル

3. パネルディスカッション「交流学習の実践に学ぶ」
司会進行:堀田龍也(BEAT客員助教授/メディア教育開発センター助教授)

3.1.「交流学習で社会と出会わせ考える力を育むために」
上村孝直(熊本県天草市立下浦第一小学校・教諭)

3.1.1. 交流学習と私

交流学習との出会いは、離島の御所浦町にいた時代に始まる。パソコン通信で東京都の子どもたちから  島について質問されたのがきっかけである。当時担任していた5年生が、船での通学、体育はプールではなく海で泳ぐことなど特徴的なことを紹介した。

3.1.2. 交流学習の今と昔

上村孝直 今のインターネットを用いたものとちがい、全て文字ベース、パソコンは私物、低速な回線、通信費は自腹だった。
現在の下浦第一小学校では、一人一台のインターネットにつながったパソコン、教室にはプロジェクタとスクリーンがあるなど充実したものになっている。教科書もそのような環境を前提とした項目が盛り込まれている。掲示板やeメールを使って、各地の方言(国語科)や産業(社会科)を、調べようという項目がある。
交流学習のタイプは、以前は社会との交流が重視されていたが、今は学校間交流が重視されている。これは交流から学ぶプロセスへの移行を意味しており、学習方法として市民権を得てきたことの表れである。

3.1.3. 学校間交流学習の実際

上村孝直 「おこめ」をテーマに全国各地の学校と交流を行い、熊本の小学生が気づいたことは、桜前線は北上するのに、暖かいはずの熊本地方が日本一田植えが遅いということである。その疑問から自分たちの地域を調査する実践を行った。その結果、裏作という地域特有の習慣が見えてきた。
また熊本は十分暖かいので、多少田植えが遅れても米が育つということに子どもたちは気づいた。熊本では稲作は赤字になることさえあるが、それでも稲作をやる人たちの米への思いというものもまた知ることができた。
他にも、ISO14001を取得している天草市の特色を生かして、「ごみのゆくえ大調査」を行った。仙台市のゴミの出し方マニュアルを見て、天草市との差に子どもたちは大変驚いてた。細かい天草市に対して、おおざっぱな仙台市との違いは、「分けてから集める」か「集めてから分けるか」のちがいである。他にも焼却場の性能の違いなどを理解した上で、リサイクルを重視しているのはどちらも同じでも、その方法が違う、ということを理解した。

3.1.4. まとめ:交流学習がもたらすもの

  • 交流学習を通じて、物事を多面的に見る力が育つこと
  • 多くの人たち、その手段であるメディアとの「つきあい方」を体験的に学べること
  • 各地の「おいしいもの」が、手にはいるようになること

3.2.「ことばを見つめ,磨く"Japan-UK Live!"の活用」
金 隆子(山形県米沢市立南原中学校・教諭)

3.2.1. なぜ「Japan-UK Live!」か

金 隆子 最近、中学生の文章を書く能力が落ちてきていると実感している。文章を書くのが苦手な子どもの特徴は、

  • 何を書けばよいのかわからない
  • 書くのは面倒くさい
  • 書く必然性を感じない

といったものであるが、書くことなしに確かな言語能力の定着や思考の深まりは望めない。 豊かに表現する力は「書く」力に支えられていると思うからである。それは、

  • 個の内のあるものをまとめる力
  • 相手に伝えるために外に出す力
  • 自分自身を見つめる力

であって、これらによって豊かな表現力が実現される。
この「書く」力のレベルアップを図る場として最適であると考えられるのは、

  • 必然性を感じさせる場
  • 書く活動に広がりを持たせる場
  • 書く楽しさを味わえる場

であり、私は「Japan-UK Live!」がこのような場の機能を備えていると考えた。

3.2.2. どのように活用しているか

3.2.2.1.「Japan-UK Live!」は2・3年の選択国語で活用している。
  • 1〜3年目 単学年
  • 4〜6年目 2学年、3学年
  • 5年目〜 各テーマ+一緒にホームページ(セントエドモンドスクール)
  • 6年目(チズィックコミュニティスクール、クームズヘッドカレッジ)
3.2.2.2.「Japan-UK Live!」活用のねらい
  • 相手意識、目的意識を持たせ、主体的に「書く」意欲を育てる。
  • 必要な材料を集め、情報を選択し整理してまとめる力や活用する力を育てる
  • 表現したい内容を練るために不可欠な「書く」力を育て、高めていく
  • 今日の情報社会に必要なコミュニケーション能力の基礎を固める
3.2.2.3.「Japan-UK Live!」掲示板の活用

「Japan-UK Live!」では日本語で交流ができるため、言葉の壁がない。よって国語で国際交流が可能である。このことは、「書いてみたい」、「自分も書けそうだ」という動機付けになる。動機は、

  • 自分の書いた文章が参加者全員に共有できる
  • いろいろな人が書いた文章も読める
  • 常に自己評価、相互評価の場が準備されている

といったものである。また掲示板の役割は、

  • 交流が上手に取れている文章は見本
  • 新しい交流を促す効果
  • 掲示板での発言が自分を表現する場

であると言える。また、 掲示板を使う上でマナー指導もできる。

  • 顔が見えない−相手を傷つけない表現で
  • わかりやすく伝える−十分な情報収集
  • 通常の会話より細かく丁寧に
  • 個人への返信も他の存在を意識する
  • 一方的な発言でなく意見を求める姿勢で
  • 自分が伝えたいことを明確にする

などを心がけさせるようにしている。

3.2.3. 成果と課題

3-1. まとめ

「Japan-UK Live!」の性質と効果には以下のようなものがある。

  • 伝えることの必然性→興味・関心の継続
  • メディアを使って伝える→言葉を磨く
  • 交流活動の中に情報活用の実践力の養成
3-2. キーワードは「伝え合う力」

「Japan UK Live!」の活用から

  • 自分の考えを持ち論理的に意見を述べる力
  • 目的や場に応じて適切に表現する力、読み取る力
  • 読書に親しむ能力

という国語科の目標にも効率よく近づく手応えを感じている。

3-3. 生徒の感想
  • 作文は嫌いだったが毎回書いているうちに楽に書けるようになった
  • イギリスの文化を知ることはもちろん、あらためて米沢や日本の良さについて考えた
  • 伝えたい、訴えたいことを書くうちに「書く力」と「考える力」がついた
  • 伝えることを調べることによって知識が身についた
  • パソコンで文字を打つのが速くなった
  • 書いたことを受け取ってくれる人がいると意欲が出る
  • 生きたイギリスを知ることが出来た
3-4. NRTの結果

学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち 「Japan-UK Live!」参加メンバーの昨年度はじめと今年度初めの書く能力と読む能力について比較したところ、平均未満が一年後はほとんどの項目で平均を上回っていた

4. ラウンドテーブル

続いて、ラウンドテーブルが行われ、会場から寄せられた質問に登壇者の方々が答えました。

Q.「Japan UK Live!」の参加学校数は?また、その中には地方の学校や公立の学校は含まれますか?

ポッター:イギリスから約10校、日本から35校くらいです。地方の学校は含まれています。またほとんど公立の学校です。

Q. 交流学習に丁度よいクラスのサイズはありますか?

学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち ポッター:特にないのですが、大きい場合は工夫が必要です。6人なら6人、300人なら複数合わせて300人に対応するなど、日英双方の数を合わせています。

稲垣:日本国内の場合は教育関係のメーリングリストや、前任校の先生などとマッチングする場合が多いようです。

Q: 交流学習に適した時期はありますか?

ポッター:日英交流の場合は、試験の時期を考慮すると9月から10月が一番やりやすいです。

稲垣:国内ですと、1学期に顔合わせして、2学期に詰めて、3学期にまとめるというパターンが多いです。夏休みに計画を練って2学期に実践することもあります。また、小学校4・5年生の社会科の単元では、交流したら面白そうなものが多いのでその時期かなと思います

Q.「Japan UK Live!」は何人くらいで運営しているのでしょうか?

ポッター:オフィスにいるのは3人です。翻訳チームは10人くらいです。学校が増えたら人も増やそうと考えています。

Q.「Japan UK Live!」の運営コストは将来も保証されていますか?

ポッター:「Japan UK Live!」はボランティア団体ですが、バブル時代に設立したため、そのときのファンドで運営しています。まだしばらくは大丈夫そうです。

Q: 交流学習が普段の学習に転移していることはありますか?

上村:転移は具体的に測れていないのが事実です。ただ、交流学習を経験した生徒達は、いろいろな人に文章を書くのがうまいと指摘されます。それは効果かもしれません。

Q: 周囲の人から批判はありませんか?

上村:やり始めたときはほぼ100%応援してもらっていましたが、最近はぽつぽつと「いらないことはしないでくれ、もっと国語や算数をやってくれ」という雑音も出るようになってきました。

Q: 実践の仕込みはどれくらいしていますか?

稲垣:プロジェクトの内容によりますが、逆に2週間でできるプログラムなどがあります。

:「Japan UK Live!」では準備時間が必要ありません。

Q: 掲示板やテレビ会議など様々なツールがありますが、どのように使い分けると効果的なのでしょうか?

稲垣:逆にどのようなツールを使ったらよいかと考えることが情報教育で必要なことだと思います。学校間なので時間の同期が取れない場合は掲示板が都合が良く、それをベースにたまにテレビ会議を用いたりしています。

最後に堀田氏から総括がありました。

1. 学校間交流は子どもたちに豊かな学びを与える

キー概念:「異同」〜その「効能」をどうアピールするか

学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち 学校間交流では,「異なる」ことや「同じ」ことを利用して,子どもたちの認識を広げたり深めたりしています。「異同」の概念は世の中では巧みに使い分けられていますが、その使い分けに気づくことが世の中を見る上で大きな力になるのではないかと考えます。学校間交流にこのような効能があることをアピールするのが教育者、研究者、実践者の課題であります。

2. 交流学習では支援が大切

その「システム」を誰がどう運営するか

支援が無くても運営できる先生は中にはいますが、多くの先生は超多忙です。そのような先生をどうサポートするか,支援するシステムと運営母体が課題です。

3. 教育の注目点は振り子のように揺れる

また「流行」がやってくる?

教育の注目点は色々なところを行ったり来たりします。しかし本質は「どれも大事」ということです。先生はそれぞれをきちんとやっていても、保護者や社会は注目点ばかりを見ようとしますから,見当違いなことをやっている様に見えてしまうことがあります。学校間交流がもてはやされる土壌は,現在の基礎基本の徹底の土壌とは少し違います。ただ、また振り子は戻ってくるので、そのときのためにこれからもがんばっていきましょう

学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで異文化を学ぶ子どもたち 交流学習ということは、単に他者の文化を学ぶためにあるのではないということがよく理解できました。特に、コミュニケーションによる他文化理解のプロセスを経ることで、自分の文化への理解の深化が起こるということは重要な点であると思います。他にも今回紹介された交流学習の成果事例から、国際間や遠距離を行き来する大げさな交流を仕組まずとも、日常の教室空間でも応用可能な知見が多く見出せると感じました。

テーマ

学校の枠を超えた交流学習:伝え合うことで"異文化"を学ぶ子どもたち

日時
2006年9月2日(土曜日)
午後2時〜午後5時
場所
東京大学 本郷キャンパス
工学部2号館北館 9階 92-B教室
定員
定員70〜90名
内容
インターネットが学校で活用されるようになった1995年頃から、交流学習には大きな注目と期待が寄せられ、実践研究が進められてきました。

交流学習には、教育内容としても教育方法としても、大きな可能性と実績があります。しかし、教師にとっては、クラスの子どもたち以外の「他者」が存在することを前提に授業を設計し、運用することは、容易なことではありません。学習効果があるとわかっていても、実施が難しいのです。

そこで今回は、国内外の交流学習を成功させている方々をお招きし、ベスト・プラクティスから以下の諸点を学びたいと考えています。

1)交流学習の教育効果はどのようなものか、何に効くのか
2)交流学習の成功の秘訣は何か
3)交流学習の「よさ」を引き出すために、今後、テクノロジーに期待されることは何か

企画担当:堀田 龍也
プログラム
(敬称略)
14:00〜
企画趣旨説明
堀田龍也(BEAT客員助教授/メディア教育開発センター助教授)

14:10〜
基調講演:「日英交流学習サイト"Japan-UK Live!"」
ハイディ・ポッター(ジャパン21・エグゼクティブディレクター)
http://www.japan21.org.uk/

14:45〜
チュートリアル:「交流学習の現状と課題」
稲垣 忠(東北学院大学教養学部・助教授)

15:35〜
パネルディスカッション「交流学習の実践に学ぶ」
司会進行:(BEAT客員助教授/メディア教育開発センター助教授)
・「交流学習で社会と出会わせ考える力を育むために」
 上村孝直(熊本県天草市立下浦第一小学校・教諭)
・「ことばを見つめ,磨く"Japan-UK Live!"の活用」
 金 隆子(山形県米沢市立南原中学校・教諭)

17:00 終了
参加費
無料

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