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Beating 第92号
2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第10回:外国語学習への不安感が口頭試験の成績に及ぼす影響

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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第92号     2012年1月31日発行
現在登録数 2,866名

2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第10回: 外国語学習への不安感が口頭試験の成績に及ぼす影響


http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m092

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みなさま、こんにちは!

年が明けたと思ったら、センター試験を皮切りに受験シーズンに突入ですね。
今月号の「@Eduなう!拡大版」では外国語学習への不安感と
口頭試験の成績に及ぼす影響について取り上げます。

前回のBEATセミナーの報告と、次回BEATセミナーのご案内も
掲載していますのでどうぞお見逃しなく!

では、Beating第92号のスタートです!

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★CONTENTS★
【特集】2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第10回:外国語学習への不安感が口頭試験の成績に及ぼす影響

お知らせ・BEAT Seminar 
2011年度第3回 BEAT公開研究会
「デジタル読解力を育てる情報教育」開催報告

お知らせ・BEAT Seminar 
2011年度第4回 BEAT公開研究会 
「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」開催予告!

3. お知らせ・UTalk
「車載カメラで都市を視る」のご案内

4.編集後記


特集─────────────────────────────────
━━ 2011年度Beating特集「@Eduなう!拡大版」
第10回:外国語学習への不安感が口頭試験の成績に及ぼす影響
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2012/1/6 12:58:13
https://twitter.com/#!/beatiii/status/155136058470834176
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──
解説
──
(Hewitt and Stephenson, 2011)スペイン人が外国語として英語を学習する
場面に焦点を当て、言語不安と口頭試験でのパフォーマンスとの関係を
定量的かつ定性的に検討した実験研究。http://ht.ly/8iTGS


■背景と問題
多くの先生たちは、学生が教室での言語学習に不安を感じており、そうした
言語不安は、言語力が低いという個人の実感に関係していると考えられて
きました。言語不安の原因として、他人との比較、先生との関係性、自信の
なさ、試験などがあげられます。言語不安と言語の習熟とのつながりについて
は、言語力が不安を生むという指摘がされている一方で、不安が学習成果に
負の影響を与えると主張する研究者もいます。

言語不安と言語学習の関係についての代表的な研究として、フィリップスが
1992年に発表した論文をとりあげます。フィリップスは、言語不安がフランス
語の口頭試験の得点に与える影響を検討し、口頭試験を構成する複数の要素と
不安との関係を定量的に評価しました。フィリップスの研究も含め、その後
17年以上の間に行われた数々の研究によって、言語不安と口頭試験との間には
負の関係があることがすでに指摘されています。ただし、これまでの研究には、
言語評価方法の信頼性を検討していないという課題が残されていることから、
言語不安の程度と口頭能力が相互に関連していることを理解するためには、
一般的な言語能力と特定の口頭能力の両方を正しく測定する必要があると
いえるでしょう。

■目的
フィリップスは、方法と結果について詳細な説明を残しているため、同じ
手順を用いて実験を行うことや、同一の不安尺度と口頭能力の水準を用いて
再実験することが可能です。フィリップスの研究を踏まえて追試を行うことは、
フィリップスの研究手段および知見に対して、妥当性、信頼性、一般化可能性
を付与するという点で意義があるといえます。本研究では、フィリップスが
用いた口頭試験の妥当性を確認し、彼女が自身の研究において発見した変数間
の関係の信頼性を検討したいと考えました。そこで、フィリップスが示した
2つの研究課題に応えることを、本研究の目的としました。

1. 言語不安は、正確さやわかりやすい話し方に関連した複数のパフォーマンス
変数と、テストによって測定される学生の口頭試験の得点に、どのような影響
を与えるのか?
2. 高い言語不安を抱いている学生は、外国語での口頭試験を受けた経験につい
て、インタビューでどのようなことを述べるのだろうか?

■方法 
本研究の対象者は40名の大学生(女性28名、男性12名)で、全員が選択科目
である大学レベルの英語コースに登録していました。英語コースは、10月から
1月まで、2月から6月までの2学期制で1年間行われました。最初の授業で
参加者は、QPTとアンケートへの回答を求められました。QPTは、英語の
習熟度を測定するための実力テストのひとつで、読み、単語、文法を評価する
40項目から構成されています。アンケートには、言語不安を推測するための
質問として、「フランス語の口頭試験の成績は、フランス語の能力を示している
か?」「フランス語の口頭試験の成績は、緊張感や不安に影響されるか?」と
いう2つの項目が含まれていました。

最初の授業から2週間半後、参加者はFLCAS(スペイン語版)に取り組みまし
た。FLCASは、教室での外国語学習時に、学生が感じる緊張感や不安感を評価
するための尺度です。計33項目から構成され、それぞれの項目に対して参加者
は、「全体的にそう思う」から「全体的にそう思わない」までの5段階評定で
回答しました。前期の9週間の間に、教員はアンケートとFLCASの回答を
もとに、言語不安の高い6名の学生を選びました。その際、英語の習熟度が
高い学生3名と低い学生3名を選ぶために、QPTの得点を参考にしました。
それと同時に、教員は参加者のレベルを主観的にランク付けしました。

前期の最終回では、筆記試験と口頭試験が参加者に課されました。筆記試験に
は、書き取り、聞き取り、文法、作文、読み取りの5つの要素が含まれて
いました。口頭試験は、科学技術、農業、観光事業といった文化的な話題に
ついての質疑応答に加えて、日常生活での兄弟や友人との会話をロールプレイ
するという2パート構成で行われ、文法、語彙、発音、流暢さが評価されまし
た。口頭試験が終わった後、言語不安の高い6名の学生はその場に残るよう
指示され、試験中に何を考えどのように感じていたかについて、スペイン語で
のインタビュー調査が行われました。

最後に、口頭能力の基準の信頼性を評価することは必要不可欠だという考え
から、教員によって、成績の評価が8つの基準に沿って行われました。2番目の
評定者として、長年にわたり外国語として英語を教授した経験のある人が
選ばれました。口頭試験の得点が高い人、中程度の人、低い人からランダムに
3名ずつ選ばれた計9名の学生の口頭試験について、教員と同様に8つの基準
に従って評価を行い、評定者間の信頼性を検討しました。

■結果 
[研究課題1に対する結果]
FLCASによって測定された言語不安と口頭試験の得点の間には、有意な負の
相関関係がみられました。この結果は、言語不安の程度が高い学生ほど、口頭
試験の得点が低くなることを示唆しています。また、教員による主観的な
ランク付けと筆記試験の得点を統制した場合、言語不安と口頭試験の得点の
間には、有意な負の相関関係がみられました。なお、英語の習熟度を測るQPT
の得点と口頭試験の間には、有意な正の相関関係がみられたことから、英語の
習熟度が高い学生ほど、口頭試験や筆記試験において高い得点を取ることが
示されました。加えて、言語不安が高い学生は、言語不安が中程度もしくは
低い学生よりも、口頭試験の得点が有意に低いという結果が得られました。

口頭能力の基準変数8つと言語不安の関係については、コミュニケーション
ユニットの総単語数と言語不安の間に有意な負の相関関係が、コミュニケー
ションの成立に寄与しない単語数の割合と言語不安の間に有意な正の相関関係
がみられました。また、教員による主観的なランク付けと筆記試験の得点を
統制した場合も、同様の結果が確認されました。これらの結果から、コミュニ
ケーションユニットの総単語数の多さや、コミュニケーションの成立に寄与
しない単語数の割合の低さが、言語不安が低いという指標になりうることが
示唆されました。加えて、言語不安が高い学生は、言語不安が中程度もしくは
低い学生よりも、コミュニケーションの成立に寄与しない単語が有意に長く、
そうした単語の割合が有意に高いという結果が得られました。

[2つ目の研究課題に対する結果]
口頭試験後のインタビューにおいて、口頭試験の得点の高い低いにかかわらず
6名の学生全員が、イライラさせられたと報告しました。また、彼らは緊張感や
イライラを主張しただけでなく、試験中に不安を感じたとも答えていました。
口頭試験得点の高い学生と低い学生を比較したところ、学習方略や実行方略に
違いがあることが明らかになりました。得点の低い3名の学生は、試験の準備
をする際、ノートの記憶と翻訳を方略として用いたと報告しました。これは、
フィリップスの研究では指摘されていない新たな知見でした。

■考察
以上の結果を踏まえて、本研究はフィリップスの研究成果の信頼性と一般性を
検討したという点で、追試としての役割を十分に果たしたといえるでしょう。
本研究では、言語不安と口頭能力の間、そして言語不安と口頭能力の基準変数
の間に、有意な負の相関関係があることを定量的に示しました。つまり、フィ
リップスの知見を支持する結果を得ただけでなく、言語不安と第2言語である
英語の習熟度の間に一貫した負の相関関係があることを明らかにしたという点
で、言語不安に関する研究に重要な知見を付与したといえるでしょう。
 
さらに、8つの口頭能力の基準変数のうち2つが、言語不安との間に有意な負の
相関関係を有しているという結果は、フィリップスの研究では得られていない
新たな発見でした。そして、口頭試験後のインタビューにより、口頭試験の
得点が低い学生の学習方略や成功しない実行方略が定性的に明らかにされた
ことで、私たちの理解はより深まりました。

今後は、フィリップスの研究だけでなく、言語不安と口頭能力に関するすべて
の既存の調査の信頼性や一般性の検討に貢献できるように励んでいきたいと、
締めくくっています。

◎特集記事協力◎
伏木田稚子/東京大学 大学院 学際情報学府 博士1年

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BEATはTwitterを利用して教育やICTに関する最新情報や、BEATに関する
情報を発信しています。Beatingで紹介している情報以外にも多くの情報を
発信していますので、Twitterをご利用のかたはぜひBEAT公式アカウント
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おしらせ・BEAT Seminar  ─────────────────────
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2011年度第3回BEAT公開研究会
「デジタル読解力を育てる情報教育」開催報告
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2011年12月17日(土曜日)に2011年度第3回 BEAT公開研究会
「デジタル読解力を育てる情報教育」を開催しました。

当日の内容をセミナーレポートにまとめました。会場にお越しになった方も、
残念ながらお越しになれなかった方も、ぜひご覧ください。
http://www.beatiii.jp/seminar/047.html

セミナーでは、前回に引き続きTwitterでハッシュタグ #beat2011を
設定し、Twitter上でも多くのコメントをいただきました。皆様から集まった
TweetをTogetterでまとめましたので、こちらも、レポートと併せてご覧くだ
さい。

▼Togetter - まとめ「デジタル読解力を育てる情報教育
(2011年度第3回BEATセミナー)」
http://togetter.com/li/229349


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おしらせ・BEAT Seminar  ─────────────────────
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2011年度第4回BEAT公開研究会
「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」開催予告!
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BEAT(東京大学情報学環ベネッセ先端教育技術学講座)では、
2011年度第4回 BEAT Seminar「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」
を3月24日(土曜日)に開催致します。
近年のソーシャルメディアの急速な普及により、人々の関わり方やつながり方
に大きな変化が見られるとともに、コラボレーションや学習の形態も様変わり
しつつあります。ソーシャルメディアがもたらす新たな学び「ソーシャルラー
ニング」が、これからの人財育成のあり方にどのような影響を与えるかが問わ
れています。

今回のBEATセミナーでは、まず、BEAT で今年度実施したSoclaプロジェク
トの活動成果をご報告します。高校生を対象にFacebook上で実施したプロジェ
クト学習プログラムと、小論文、数学をテーマとした基礎学習の研究プロジェ
クトの報告を行います。次に、これまで数々の社会人教育プログラムの設立に
取り組まれ、政府審議会等で次世代人財育成のあり方を提言してこられた妹尾
堅一郎氏(産学連携推進機構 理事長、コンピュータ利用教育学会 会長、
一橋大学大学院MBA 客員教授)に人財育成に求められるイノベーションと
教育機関のあり方についてご講演いただき、これからの人財育成における
ソーシャルメディアを利用した学習環境デザインの可能性や課題を議論
します。
みなさまのご参加をお待ちしております。

日時:2012年3月24日(土)13:00~17:30 

場所:東京大学 本郷キャンパス 情報学環・福武ホール(赤門横)
福武ラーニングシアター(B2F)
アクセスマップ>> http://www.beatiii.jp/seminar/seminar-map48.pdf

内容:
13:00-13:15 
趣旨説明 山内祐平(東京大学 准教授)

13:15-14:20
2011年度BEAT成果報告
報告1:Socla 数学学習 藤本徹(東京大学 特任助教)
報告2:Socla 小論文学習 高橋薫(東京大学 特任助教)
報告3:Soclaプロジェクト学習 山内祐平(東京大学 准教授)
今年度成果の総括と来年度に向けて 山内祐平(東京大学 准教授)

14:30-15:30 
講演「先端人財育成モデルのイノベーション
~工業モデルの熟達者訓練、農業モデルのイノベーター育成~」
妹尾堅一郎(産学連携推進機構 理事長、コンピュータ利用教育学会 会長、
一橋大学大学院MBA 客員教授)

15:40-16:00 
参加者によるグループディスカッション

16:00-17:30 
パネルディスカッション「ソーシャルラーニングとこれからの人財育成」 
パネリスト:
妹尾堅一郎
山内祐平
未定(外部より招聘)
司会:
藤本徹
高橋薫

定員:180 名 
参加費:無料 
懇親会:セミナー終了後 1F UT Cafe にて	参加希望者(3,000円)

お申し込みはこちら
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
http://www.beatiii.jp/seminar/index.html


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お知らせ UTalk       ──────────────────────
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「車載カメラで都市を視る」のご案内
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UTalkは、様々な領域で活躍している東京大学の研究者をゲストとして招き、
毎月開催するイベントです。カフェならではの雰囲気、空気感を大切にし、
気軽にお茶をする感覚のまま、ゲストとの会話をお楽しみいただける場と
なっています。

2月は、車載カメラを使いながらシミュレーションを用いた研究をされている
小野晋太郎さん(東京大学生産技術研究所・特任助教)をお招きします。
眼鏡型ディスプレイやドライビングシミュレーターの映像などをお見せいただく
予定です。みなさまのご参加をお待ちしています。

日時:2月11日(土曜日)午後2:00-3:00


場所:UTCafe BERTHOLLET Rouge(東京大学 情報学環・福武ホール併設)
http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/access.html
料金:500円(ドリンク付き/要予約)
定員:15名

申し込み方法:UTalkホームページ https://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/utalk/
の参加申込フォームに必要事項をご記入の上、お申し込みください。

※申し込みの締め切りは2月3日(金)までとします。
なお、申し込み者多数の場合は抽選とさせていただく場合がございます。
ご了承ください。


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 編 集 後 記 ──────────────────────
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Beating92号はいかがでしたでしょうか。

BEATのSoclaプロジェクトでは、高校生を対象にソーシャルネット
ワーキングサービスを活用して、夏にはプロジェクト学習を、冬には基礎学習
(小論文・数学)を取り上げて研究を行っています。現在は基礎学習研究の
真っただ中。3月のBEATセミナーでの報告に向けて全力疾走中です!
どうぞお楽しみに。


ご意見・ご感想をお待ちしております。

「Beating」編集担当 高橋 薫 (たかはし かおる) kaorutkh@beatiii.jp

-------次回発行は2月28日の予定です。

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「Beating」編集担当 高橋 薫 kaorutkh@beatiii.jp
(東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育技術学講座 特任助教)

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□発行:東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
Copyright(c) 2012. Interfaculty Initiative in information Studies,
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