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Beating 第52号
2008年度Beating特集「5分で分かる学習フロンティア」
第6回:幼児教育のフロンティア「理論」

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東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」
メールマガジン「Beating」第52号     2008年9月30日発行
現在登録者数 1659名

2008年度Beating特集「5分で分かる学習フロンティア」
第6回:幼児教育のフロンティア 「理論」

http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m052
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みなさん、こんにちは。9月に入って、台風が来たり、大気が不安定だったり、
ジメジメした日が続きましたね。「ゲリラ豪雨」と言われるような突然の大雨
に苦しめられた方も多いのではないでしょうか?明日から10月です。暑さから
も解放され、季節は本格的な秋になります。いろんな秋がありますが、楽しい
秋にしましょう。

それでは2008年度Beating 第52号のスタートです。

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┃★CONTENTS★
┃■1.  特集:2008年度Beating特集「5分で分かる学習フロンティア」
┃    第6回:幼児教育のフロンティア 「理論」:
┃             「心を読む心の科学−“心の理論”とは?」
┃   
┃
┃■2. 【お知らせ1】「2008年度 第2回 BEAT Seminar」のWebサイトの
┃           ご案内
┃
┃■3. 【お知らせ2】[新刊紹介] BEAT特任教授 飯吉透先生 編集
┃                  "Opening Up Education: The Collective Advancement 
┃                   of Education Through Open Technology, Open Content,
┃                   and Open Knowledge"の紹介
┃                
┃                  
┃
┃■4.  編集後記
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■1. 特集:2008年度Beating特集「5分で分かる学習フロンティア」
    第6回:幼児教育のフロンティア 「理論」:
      「心を読む心の科学−“心の理論”とは?」
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今年度のBeatingでは、情報通信技術が導入されて間もない教科や領域に注目し、
その教科や領域で活躍する人や理論、プロジェクトを紹介しております。

題して「5分で分かる学習フロンティア」!!その第6回となる今月は、
”幼児教育”の「理論」編です。

幼児期によく見られる遊びといえば“ごっこ遊び”や“ままごと遊び”があり
ますね。たどたどしい口調ながらも役になりきってお話ししている姿はとても
微笑ましいものです。そして、よーく注意してお話を聞いてみると・・・

 「ほら、ちゃんとお片づけしなさいって、いつも言ってるでしょ?」
 「だって、もう少しで完成するんだもん。」
 「今日は午後からお客さまが来るのよ。お母さんを困らせないで。」

人形を操りながら口調を変えて、一人で何役もこなしています。
さらに内容を見てみると、お母さんの気持ちを分かっているということ、
分かっていてもやってしまう子どもとの心情のやりとりを理解し、ストーリー
として展開しているということにも驚かされます。
幼稚園の年長さんともなると他者の心を理解している様子が遊びの中からも
伺うことができます。では、幼児期におけるこのような発達はいつどのように
行われているのでしょうか?

今月は、幼児教育の「理論」編として「心の理論」についてご紹介します。


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■心を読む心の科学−“心の理論”とは?:研究のはじまりと概要

心の理論とは、自分や他者の行動を予測したり、説明したりするために使われ
る心の動きについての知識や原理のことを指しています。この概念は、
Premack & Woodruffの「チンパンジーは心の理論を持つか?」(1978)という
論文で提唱されました。彼らは、「動物に他者の心は理解できるか?」という
問いを投げたのです。ここでは、同種の仲間であれ多種の個体であれ、他者の
行動に「心」を帰属させることを「心の理論」ということばで説明し、他者の
目的・意図・知識・信念・思考・疑念・推測・ふり・好みなどの内容が理解で
きるのであれば、その動物または人間は「心の理論」を持つ、と定義しました。

Premackらが、なぜ「理論」という科学用語をわざわざ使ったかについては、
二つの大きな理由があります。その第一は、科学においての個々の「現象」は
見えますが「理論」は見えないのと同じように、個人の一つ一つの「行動」は
見えますが、その背後の「心」は見えないからです。第二に、科学でいったん
「理論」を構成すれば、さまざまな「現象」の予測がつくようになるのと同じ
く、人の「心」についても、いったんそれについて何らかの「理論」を構成す
れば、その人の次の「行動」が読めるようになる、このような二つの理由から
「心の理論」という表現を用いたのでした。

彼らの研究では、「チンパンジーが心の理論を持つのはかなり困難」という
結果でしたが、この「心の理論」の考え方は、その後の発達心理学の中で広く
受け入れられていきました。


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■見えない心の動き−心を読み取る能力とは?

「心を帰属させる」ということとは、他者の行動の背後に「心」というものの
働きがあると仮定すること、言い換えると、他者の行動が一定の「心」のはた
らきに支配されていると考えることをいいます。

つまり、心についての理論をもつためには、まず「人はその人なりの内なる
世界(内面性)をもっており、外面的な行動はその内なる世界の特徴によって
規定され、制御されている」ということを理解し、その内なる世界の特徴は
どのような原理に支配されているかをわかることが必要です。

私達は、ある人の行動を観察し、その意図や意味を解釈するときには、他者の
期待、信念、願望と言った心理的構成概念を用いて説明します。

では、このような概念を習得しているのかどうかを調べるには、一体どうすれ
ば良いのでしょうか。

1980年代に、誤信念課題を用いた研究が登場します。他者の誤った信念の理解を
調べることによって、「心の理論」の発達的研究は飛躍的に発展していきました。


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■心をどうとらえるか?:誤信念課題

では、誤信念課題にはどのようなものがあるのでしょうか。誤信念課題とは、
ある人が心の理論を持っているか否かを見るためのものであり、次に挙げる
二つの有名な課題があります。

1)サリーとアン課題(Baron-Cohen et al., 1985)

Baron-Cohenらの考案したサリーとアン課題とは、次のようなものです。

 ㈰サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいました。 
 ㈪サリーはボールを、バスケットの中に入れて部屋を出て行きました。 
 ㈫サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移しました。 
 ㈬サリーが部屋に戻ってきました。 
 ㈭「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すでしょう?」
  と被験者に質問する。 

一般的に、4歳未満の場合には、「サリーは(アンの)箱の中を探す」と答え、
4歳以上の子どもの場合には、「サリーは(サリーの)バスケットの中を探す」
と答えるようになると言われています。当然ながら、後者の答えが正解です。

ではなぜ子どもが「箱」と答えてしまうのかというと、これは子どもが、自分の
持っている知識と第三者が持っている知識が違うことを理解できていないため
です。この段階にいる子どもは、サリーではなく、その子ども自身が、今どこ
にボールがあるか、分かっている方を指してしまうのです。


2)スマーティ課題(Perner et al., 1987)

Pernerらの考案したスマーティ課題とは、次のようなものです。

3歳児を対象に、その子ども自身に、ミスリードされるということを直接体験
させた上で、他の人が自分と同じ状況に直面した時に、誤った信念を持つこと
を理解させるような実験を行いました。

 ㈰前もって被験者から見えない所で、お菓子「スマーティ」(子どもが
  大好きなチョコレートの銘柄)の箱の中に鉛筆を入れておく。 
 ㈪お菓子の箱を被験者に見せ、何が入っているか質問する。
 ㈫お菓子の箱を開けてみると、中には鉛筆が入っている。 
 ㈬お菓子の箱を閉じる。 
 ㈭「箱には実際には何が入っていた?」と「この箱をAさん(この場にいない
   人)に見せたら、何が入っていると言うと思う?」と質問する。 

この実験でみられているのは、子ども自身が過去の誤信念を理解しているか、
そして他者の誤信念を理解しているか、ということです。

この実験の結果からは、3歳から4歳にかけて誤信念の理解が次第に可能になる
ことが示唆されています。


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■心の理論の健常な発達過程と自閉症児との違い

誤信念課題を用いた研究により、心の理論は、3歳から徐々に、そして4歳から
6歳にかけて成立していくものであると示す結果が得られました。

3歳代では、心の表象(心に思い浮かべられる像)的働きを理解するようになり
ますが、表象は外界のコピーであると解釈するレベルにとどまるため、
誤信念課題の成功はまだ難しい段階です。

これが、4歳から6歳にかけて、心は外界のコピーではなく、外界を積極的に解
釈するものであるということを次第に理解していくようになります。同じ対象
でも、それを見る人によって見方が変わることがわかるようになり、誤信念
課題にも成功できるようになるのです。

一方、Baron-Cohenらの研究では、自閉症児と健常児の比較が行われています。
高機能の自閉症児(平均11歳)の誤信念課題の正答率が20%にすぎないという
データを示しました。彼らは自閉症児の障害の中核に心の理論の欠如があると
考えました。この論文を口火に1980年代の心の理論研究は、自閉症児の発達的
研究の分野でも推進されます。

これらの研究は、自閉症の特徴のある部分をうまくつかみとると同時に、その
ことによって健常な心の発達を照らし出しました。


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■心の理論研究の新たな展開

心の理論研究は、その後、Wellmanらの二つの研究によって新たな展開が
なされます。

東山(2007)によれば、次のように整理されています。

第一の研究は、先に述べたような誤信念課題のメタ分析(*1)をしたものです。
誤信念課題を用いた心の理論の研究は、様々な国で様々な年齢の子どもについ
て通過の年齢が論じられてきました。Wellman et al.(2001)は、これらの
データを用いて、誤信念課題が通過可能になる年齢がいつなのか、またその
通過年齢が文化を超えて普遍的か否かという問題を、メタ分析によって明らか
にしました。77件の論文で報告されている591個の課題のメタ分析によって、
生後44ヶ月の幼児の50%以上が誤信念課題を通過できること、しかしながら、
その通過年齢については、文化差があることが指摘されました。データに
よれば、オーストラリアやカナダの幼児がより早い年齢で通過し、アメリカ、
イギリスなどの欧米諸国と韓国がそれに続き、オーストリアと日本の幼児が
さらに遅れると指摘されています。

第二の研究は、心の理論は、誤信念課題が扱ってきたような、他者と自己の
信念の違いを理解することのみならず、他者の欲求や感情面の理解をも含める、
多面的なものである、と提案したものです。他者の信念理解と感情理解には
理論的には関連があると考えられ、心の理論には感情の理解も含めなければ
ならないとは主張されていましたが、誤信念課題と感情理解を測る課題の関連
を示す結果は、研究によって一貫せずにおりました。その原因が、2つの課題の
フォーマットが異なりすぎていることだと考えたWellman et al.(2004)は、欲
求・信念・誤信・感情などの多面的な側面を同時に測定する方法を提案し、欲
求・信念、見ることと知ることの関係、誤信、実際と見かけの感情の違いの理
解がこの順番で年齢と共に段階的に進むことを実証的に示しました。さらに現
在、この主張が、文化を超えて妥当か否かの研究が始まっています。

心の理論の発達において、何が文化を超えて普遍的で、何が文化固有であるの
かを見ていく中で、子どもが育つ言語文化・言語習慣などの言語環境の違いが
影響するということも注目されてきています。例えば、アメリカと中国とでは、
親子の日常会話で用いられる心的な動詞に差があるということ、日本語は
英語とは異なり、話し手の心的状態をはっきり心的動詞を用いて表現しない
ことが多いことなども指摘されています。また、きょうだい経験の有無や
親子間の会話のあり方が心の理論の獲得に影響するという報告もあるようです。


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■まとめ

今月は、幼児期に飛躍的に発達する「心の理論」について紹介いたしました。

身近に子どもがいらっしゃる方なら、いつまでも赤ちゃんだと思っていた子ど
もに思いがけず思いやりの言葉をかけられ感動したり、大人顔負けにずる賢い
ことを考えていたりする姿に驚かされるという経験があると思います。

まさに幼児期の4歳から6歳の間に子ども達は、心を読み取る能力獲得を開始し、
そのことが子どもの思考や行動を豊かにしていくわけですね。機械に人間の心
を理解する「心」を移植することが、現状なかなか困難であるという状況から
も、心の不思議と偉大さを実感します。

最近問題となっている少年事件の多発は、「心の教育」の重要性を再認識させ
ています。また、社会の中で生きていくために、他者との相互作用は不可欠で
ある私達にとって、心の理論を発達させることは大変重要なことです。事実、
心の理論が発達している者ほど社会的スキルが高いという傾向がみられると
いうデータも出てきているようです。

そこで、心の理論が発達する幼児期の言語環境−子どもを取り巻く大人や友達
となどの人間関係も含めて豊かな心を育む環境づくりが大切なわけですが、
早期教育・先取り教育ではない、さらにはその国の文化にあった、幼児期に
行うべき教育のあり方を考える上でも、心の理論研究のこれからの展開に注目
していくことが重要でしょう。


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*1 メタ分析:
同じテーマに関して別々の研究者たちが取り組んだ研究結果を要約、統合し、記
述する統計的手法。当該分野における研究の方向性を見出すために行われること
が多い。

●参考文献

・Baron-Cohen, S., Leslie, A. M., & Frith, U. (1985) Does the autistic 
 child have a “theory of mind”? Cognition, 21, pp. 37-46.
・子安増生 (著)  (2000) 心の理論—心を読む心の科学 岩波書店
・森敏昭・中條和光(編)(2005) 認知心理学キーワード 有斐閣
・Perner, J., Leekam, S. R., & Wimmer, H. (1987) Three-year-olds’ 
 difficulty with false belief: The case for a conceptual deficit.
 British Journal of Developmental Psychology, 5, pp. 125-137.
・Premack, D., & Woodruff, G. (1978) Does the chimpanzee have a theory 
 of mind? The Behavioral and Brain Sciences, 4, pp. 515-526.
・東山薫 (2007) “心の理論”の多面性の発達: Wellman & Liu尺度と誤答の
 分析. 教育心理学研究, 55, pp. 359-369
・内田伸子(編)(2002) 乳幼児心理学 放送大学教育振興会
・Wellman, H. M. Cross, D., & Watson, J. (2001) Meta-analysis of
 Theory-of-Mind development: The truth about false belief. Child
 Development, 72(3), pp. 655-684.
・Wellman, H. M. & Liu, D. (2004) Scaling of Theory-of-Mind tasks. Child
 Development, 75(2), pp. 523-541.

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(特集記事担当:大城明緒/東京大学 大学院 学際情報学府 修士1年
        佐藤朝美/東京大学 大学院 学際情報学府 博士2年)
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今月の特集”幼児教育のフロンティア「理論」編”はいかがでした
でしょうか。次号からは社会科教育のフロンティアが始まります。
「5分で分かる学習フロンティア」どうぞお楽しみに!
ご意見・ご感想もお待ちしております。

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■2. 【お知らせ1】「2008年度 第2回 BEAT Seminar」のWebサイトのご案内

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今月6日に2008年度 第2回 BEATSeminar「プロジェクト学習が大学を変える」を
開催致しました。100名を超える方々にご参加頂きました。
ありがとうございました。

その内容を BEAT Webサイトに本日公開いたしました。当日出席出来なかった方
、内容を振り返りたい方、どうぞご覧下さい。

2008年度 第2回 BEATSeminar「プロジェクト学習が大学を変える」
2008年9月6日(土)
http://www.beatiii.jp/seminar/035.html?rf=bt_m052


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■3. 【お知らせ2】[新刊紹介] BEAT特任教授 飯吉透先生 編集
                 "Opening Up Education: The Collective Advancement of
                 Education Through Open Technology, Open Content, and
                 Open Knowledge"の紹介
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BEAT特任教授の飯吉先生が編集された、オープン・エデュケーションに関する
書籍「Opening Up Education」が、9月19日にMIT出版から刊行されました。

http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=11309

同書は、「教育における様々な課題が、教育テクノロジー・教材・教育的な知
識や経験を、公開し共有することによって解決され得るか」、またそのために
「教育に関わる全ての人たちが何を考え、何をすべきか」を問うために、カー
ネギー財団が実施した協同プロジェクトの成果です。収録されている30章は、
オープンコースウェアを始めとし、これまでオープン・エデュケーションに関
わってきたプロジェクトのリーダー、大学や教育機関のアドミニストレーター、
研究者、財団関係者などによって書かれ、幅広いトピックやテーマが網羅され
ています。また、この本の電子版は、クリエイティブコモンズによってMIT出版
のウェブサイトから無料でダウンロード・閲覧することができます。読み易い
英語で書かれていますので、テクノロジーが拓く教育の未来にご興味のある方
は、是非ご一読下さい。

http://mitpress.mit.edu/opening_up_education/

日本では、amazon.co.jpにて10月31日に発売予定になっております。現在、予
約受付中です。

またオープン・エデュケーションについては2007年8月に第2回BEAT 特別セミナ
ーを開催致しました。昨年度の特別セミナーでも飯吉先生と本書の共編者であ
りますMITのVijay Kumar先生にご登壇頂きました。こちらも合わせて御覧頂き
ますと幸いです。

http://www.beatiii.jp/seminar/031.html?rf=bt_m052


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■4. 編集後記

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Beating第52号はいかがでしたでしょうか。

今月頭にEuroCALLという、ヨーロッパの言語学習システムに関する国際会議に
参加してきました。開催地はハンガリーの、セーケシュフェルバールという街
で、ブダペストから1時間半ほど南西に行ったところにあります。ハンガリー
最古の街ということです。2時間半ほど歩けば周れるほど、小さな街ですが、
趣がある、穏やかな時間が流れている街でした。

国際会議では、CALLでもやはりSocial Softwareの使用というのが1つのキー
ワードになっています。特にEuroCALLではSocial Softwareによる外国語教育
にヨーロッパ共通参照枠(Common European Framework of Reference: CEFR)を
使用した実践研究が多かったです。ヨーロッパの自国以外のヨーロッパ諸国で
仕事をすることがある事情から、国を越えて言語教育を行うことが多いです。
5月のBeatingで紹介しましたEuroVOLTもその1つになります。CALLの国際会議
ですので、CEFRを中心にした議論が出るということは少なく、実践の手続きで
CEFRで学習者のレベルを測り、CEFRに沿ったコンテンツを設計、開発を行い、
研究の観点(例えば自己調整学習がどれほどできるようになったのかなど)か
ら評価を行うという発表が多かったです。このようなフレームワークをどのよ
うに使っているのか、日本の言語教育研究者は興味があるところかと思います
が、CALL研究では、CEFRに沿って、どのような学習コンテンツを作り、どのよ
うに実施するか、CALLだからできる何かを見つけることだと思います。

私の研究分野であるCMCについては最近、Second Lifeを使った実践研究が増え
てきています。聴講したかったのですが、私の発表の裏だったので、残念なが
ら聴講することができませんでした。Kamimoプロジェクトというスウェーデン
が中心になって運営されているプロジェクトです。日本では似たような研究を
京都大学のMark Peterson先生が積極的にされています。文ベース、音声ベース
のCMCよりもアバター使ったCMCだからこそ見える言語教育における効果がどう
いうものであるのか、今後どんどん研究知見が出てきそうな予感がします。楽
しみです。

来年、EuroCALLはスペインのGandiaというところで9月9日から12日まで開催さ
れます。バレンシアから特急で50分ほど南に行った街です。ご興味がありまし
たら、Google Mapで検索してみてください。

EuroCALL http://www.eurocall-languages.org/


「Beating」編集担当
山田 政寛(やまだ まさのり)
yamada@beatiii.jp

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情報は、ベネッセ先端教育技術学講座にて、「Beating」からのお知らせの
ためだけに使用いたします。また、ご本人の同意なく、第三者に提供するこ
とはございません。

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ご遠慮いただいておりますので、転載を希望される場合はご連絡下さい。

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□ご意見ご感想はコチラ
「Beating」編集担当 山田 政寛
(東京大学 大学院 情報学環 特任助教)
yamada@beatiii.jp

□「BEAT」公式Webサイト
http://www.beatiii.jp/?rf=bt_m052

□発行
東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座「BEAT」

Copyright(c) 2008. Interfaculty Initiative in information Studies,
The University of Tokyo. All Rights Reserved.
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